製品安全

Vol.478 6月10日号「エアコンの事故と試運転」


Vol.478  6月10日号 「エアコンの事故と試運転」 【PDF:1462KB】

 日本はもとより世界中で、年平均気温が2023年、2024年と2年連続で観測史上最高を更新しました(※1)。気象庁の予報では、今年の夏(6月から8月)も平年より気温が高くなる見通しとなっています(※2)。特に夏に気を付けなければいけないのは命にも関わる熱中症です。熱中症対策のひとつとしてエアコンの有効活用があげられますが、エアコンでの製品事故が毎年発生しています。
  今回は、ルームエアコン(※3)について注意するポイントを事故事例と併せて試運転前及び試運転時の確認ポイントをご紹介します。事故の未然防止や肝心な時にエアコンが使用できなくなることがないよう、早めのエアコン試運転をお勧めします。不具合が見つかれば必要に応じた修理などを済ませておきましょう。エアコンを有効に活用することで熱中症のリスクを低減し、安全で快適な夏を迎えましょう。



※1 気象庁発表 気候変動監視レポートから
 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/index.html
※2 気象庁5月20日発表の3か月予報による。
 https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?region=010000&term=P3M
※3 今回ご紹介するのは、本体が室内機/室外機に分かれた冷房エアコン、ヒートポンプ式エアコン(家庭用ルームエアコン)です。窓用エアコンは除きます。

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項目一覧

1. エアコンの事故と試運転
2. 製品事故収集情報(5月4日~ 5月17日 受付48件)
3. リコール情報 4件
4. その他の製品安全情報
 ・経済産業省令和 7 年度「製品安全対策優良企業表彰(PS アワード)」募集中!
 ・製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新
 ・「NITE SAFE-Lite」のご案内
 ・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
 ・NITE公式X アカウントのご案内

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1.エアコンの事故と試運転

◆事故の実情
 NITEには、2020年度から2024年度までの5年間に報告されたエアコンの事故が約360件ありました。この中には、設置状況の不備や取扱説明書で禁止されている行為などによる「製品に起因しない」事故も多く含まれています。また、7月、8月といった気温が高くなる時期に事故は多く報告されています。
 
◆事故事例
【事故事例.1】
 エアコン室内機及び周辺を焼損する火災が発生しました。(2021年 熊本県 30歳代・男性 拡大被害)
→エアコンの電源プラグを延長コードに接続した状態で使用していました。エアコンの電源プラグを接続していた延長コードのコードコネクターボティ内部で異常発熱した可能性が考えられます。エアコン側に出火の痕跡は認められないことから、外部からの延焼によりエアコンが焼損した事故と考えられます。延長コードの使用が原因の一つとして考えられる事故です。エアコンの電源コードのラベルには、「コードには中間接続・延長禁止」の旨、記載されていました。

 
【事故事例.2】
 エアコン室内機付近から出火し、周辺を焼損しました。(2022年 埼玉県 年齢・性別不明、拡大被害)
→電源コードを途中で切断し、継ぎ足し接続(ねじり接続)したため、接続部で接触不良が生じて異常発熱し、焼損したものと考えられます。

 
【事故事例.3】
 エアコン室外機及び周辺を焼損する火災が発生し、4名が軽傷を負いました。(2022年 東京都 30歳代・女性 軽傷)
→エアコンの電源プラグはコンセントに接続されていましたが、事故当時エアコンは使用されていませんでした。室外機が設置されていたベランダには、段ボール箱に入った家電、折りたたみ自転車等が置かれていました。エアコンの電気部品に出火の痕跡は認められないことから、室外機周囲に置かれた可燃物からの延焼による火災と考えられます。

エアコン試運転前及び試運転時の確認ポイント
運転前の確認ポイント
 (1)電源プラグは延長コード等を介さず、エアコン専用コンセントに差しているか。
 エアコン専用に設置されているコンセントに電源プラグを差し込んでください。エアコンは電源を入れた瞬間に大電流が流れる場合があるため、延長コードやテーブルタップなどを用いると異常発熱し、発煙・発火するおそれがあります。

 (2)電源プラグや室内機のフィルターにほこりがたまっていないか。
 電源プラグは、コンセントとの間に隙間が生じないようにしっかりと差し込み、定期的に掃除してほこりを取り除いてください。隙間がある状態で差したままにすると、隙間にほこりがたまって表面に水分が付着する等によってトラッキング現象(※4)が生じるおそれがあります。特に夏場は湿度が高くなるため注意が必要です。なお、掃除の際は、必ずコンセントから電源プラグを抜いて、“から拭き”でほこりを取り除いてください。
※4 付着したほこりや水分によりトラック(電気の通り道)が生成され、異常発熱する現象。

 また、室内機のフィルターにほこりがたまっていると、空気の通りが悪くなり機器の性能が落ちたり、カビが繁殖したりする要因となります。エアコンの効きが悪くなるだけでなく、電力を余分に使ってしまったり、過度な負荷がかかり劣化を促進させ故障を引き起こしたりするおそれもあります。試運転時だけではなく、小まめに掃除するようにしましょう。


(3)室外機の上や前後など周辺に物を置いていないか、ドレンホースの排出口がふさがれていないか。
 室外機周辺の片付け、清掃もするようにしましょう。室外機の周囲に可燃物が置かれていると、可燃物が着火した際に室外機に燃え移り大きな火災に至るおそれがあります。


 他にも、ダンボールやごみなどを置いておくと、小動物や虫などのすみかとなり、やがて製品内部に入り込み配線をかじったり、電源基板に接触したりすることによって短絡して発火するおそれもあります。可燃物を置かないように注意してください。


※5 水が入ったペットボトルが凸レンズ(虫眼鏡等)のように作用して、太陽光が一点に集まり、可燃物が発火すること。


 また、ドレンホースの排出口がふさがれていると排水ができず、室内機からの水漏れを引き起こす原因となります。


試運転時の確認ポイント
○冷房運転をして冷風が出るか、異常が生じないか。
 設定可能な最低温度に設定し、冷房運転で冷風が出るかどうかを10分間試運転して確認してください。さらに30分ほど運転して、以下のような異常がないか確認しましょう。
 ☑室内機から水漏れがないか。
 ☑室内機や室外機から異音・異臭(焦げ臭いにおい)がないか。
 ☑エラー表示がないか、意図せず電源が落ちないか。
 もし異常が確認された場合には、販売店やメーカーに相談し、必要に応じて点検を受けてください。異常を放置したまま使用を続けてしまうと、事故につながるおそれがあります。


(参考)一般社団法人日本冷凍空調工業会及び一般財団法人家電製品協会
「エアコンシーズン前点検パンフレット」
 https://www.jraia.or.jp/file/A_air_conditioner_maintenance_01.pdf
 https://www.aeha.or.jp/safety/pdf/air_conditioner_maintenance.pdf
 
■NITEでは、5月29日に注意喚起として 『 暑くなったら手遅れです!~早めのエアコン試運転で事故と熱中症を防ぎましょう~ 』 をプレスリリースしています。
 今回ご紹介したエアコンの事故の詳しい分析結果のほかにも、エアコンの詳しい構造や冷える原理、近年の熱中症に関する傾向などの情報を掲載しています。ぜひご覧ください。
 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250529.html
【新作動画】エアコン「9.試運転前の3つのチェックポイント」
 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/2025052901.html

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2.製品事故収集情報

◆◆◇    消費生活用製品の事故情報収集状況    ◇◆◆
(5月4日~ 5月17日 受付48件)
     NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
========================================================       
 製品名                   (事故状況と件数)
            
          1. モバイルバッテリー           ( 火災等  4件 )
          2. ポータブル電源             ( 火災等  3件 )
          2. 電気やかん(電気湯沸かし器)      ( 火災等  3件 )
          3. 電気毛布                ( 火災等  2件 )
          3. 石油ストーブ              ( 火災等  2件 )
          3. エアコン                ( 火災等  2件 )
========================================================
電気やかんは、電源プラグから火が出たというもので同じ事業者の事故です。
         2 件の事故は、上記の他に 2製品あります。
 
◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
 
■事故情報の提供をお願いいたします。
 事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html

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3.リコール情報

◆市場株式会社(法人番号:5140001076054)
「折りたたみ椅子」2025年5月9日(HP)
【詳細】https://ichiba-web.com
(販売事業者)株式会社アダストリア
 https://www.adastria.co.jp/news/notice/entry-17001/
 
◆株式会社コンセル(法人番号:68030001021984)
「玩具」2025年5月29日(HP)
【詳細】https://www.comcell.co.jp/archives/cpt_news/recall202505
 
◆株式会社チヨダ(法人番号:1011301004381)
「サンダル」2025年5月30日(HP)
【詳細】https://www.chiyodagrp.co.jp/information/2025/0530/
 
◆株式会社ドリームファクトリー(法人番号:8120001108731)
「マッサージ器(充電式)」2025年6月2日(HP)
【詳細】https://www.dr-air.com/jp/ja/20250602-1/

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4.その他の製品安全情報

◆◆◇ 令和7年度「製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)」募集中! ◇◆◆
<応募・審査費用は無料です。皆様、奮ってご応募ください。>

                                        経済産業省
1.企業・組織部門
 消費生活用製品に関わる全ての企業・団体が応募対象になります。応募により、社内の製品安全に対する取組に対して、客観的な評価を得られます。
【募集対象】
 ・「消費生活用製品」の製造・輸入、小売販売事業を行っている企業
 ・「消費生活用製品」に関連した事業を行っている企業・団体
 ・ネットモール運営事業者
※令和5及び6年度の受賞者におかれましては留意事項がありますので、応募要領を事前にご確認ください。
【個別相談会】
 オンラインでの実施となります。詳しくはHPをご確認ください。
 https://www.meti.go.jp/product_safety/ps-award/index.html
 
2.製品部門「誤使用・不注意による製品事故リスクを低減する製品の表彰・表示制度(愛称:プラスあんしん)」
 経済産業省は、「誤使用等による事故の未然防止に役立つ機能を持つ製品にマークを表示し、消費者が安全な製品を選択できるようにサポートする制度を開始しました。製品全体として基本的な安全性が担保された上で、特定の誤使用・不注意による事故リスクが低減されるような対策が組み込まれた製品を評価するものです。
【募集対象】
 「消費生活用製品」に該当し、特定の誤使用・不注意による事故のリスクを低減するための対策が組み込まれ、一定のリスク低減が論理的に認められるもの。
【個別相談会】
 詳しくは以下HPをご確認ください。
 https://www.meti.go.jp/product_safety/ps-award/risksystem/
 
【募集期間】 4月9日(水)~6月27日(金)
 
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◆◆◇ 製品安全4法一部改正に関する解説動画作成及び英語版サイトの更新 ◇◆◆
経済産業省 製品安全課
 
経済産業省では、令和7年12月に施行される「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」の概要や、主な改正内容についての解説動画や、英語サイト(海外事業者向け)をこの度、整備いたしました。海外からオンラインモール等を通じて日本国内の消費者に製品を販売する事業者や、子供向け製品の製造・輸入・販売事業者におかれては、ぜひご覧ください。
 
以下リンク先に日本語版と英語版の紹介サイトを掲載しております。
【日本語版】
・(ベース)製安4法の解説動画(3分半)
 https://www.youtube.com/watch?v=GuLbROueXFk
・改正法の概要動画(4分)
 https://www.youtube.com/watch?v=6RRda5ZYpUI
 
【英語版】
1.解説動画
・(ベース)製安4法の解説(3分44秒)
 https://www.youtube.com/watch?v=ltcJWVvVays
・改正法の概要動画(3分半)
 https://www.youtube.com/watch?v=HatWmLQ2X7Y&t=209s
 
2.製品安全4法に関する解説ページ(更新版:各法の事業者向けガイド等)
 https://www.meti.go.jp/english/policy/economy/consumer/product_safety/index.html
 
ぜひご覧ください。
 
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◆◆◇  「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
 
 NITE は、より安心・安全な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信しており、NITE のウェブサイトで、製品事故の調査結果、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを提供しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「NITE SAFE-Lite」というサービスを提供しています。
 
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
 
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
 
【NITE SAFE-Lite】
 https://safe-lite.nite.go.jp/
 
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       ◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
 
                                    消費者庁
 
 消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。
 
06/06 32件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250606_01.pdf

06/03 08件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250603_01.pdf

05/30 12件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250530_01.pdf

05/27 09件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250527_01.pdf
 
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◆◆◇ NITE公式Xアカウントのご案内 ◇◆◆
 
 NITEでは、公式アカウントを開設しています。
 Xでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
 
 Xアカウント→@NITE_JP

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編集後記

 2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が義務化されました(※6)。熱中症になる恐れのある作業を行う際に、熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症のおそれがある作業者を見つけた場合、社内に報告する体制の整備が求められます。また、熱中症の防止措置やその手順を定め、周知させることも求められます。
※6 詳しくは厚生労働省のパンフレット、リーフレットをご参照ください。
 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf
 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212914.pdf
 職場においては、今回のエアコン試運転の他にも、熱中症が起きた場合に対応する準備がされているか併せて確認も必要ですね。皆様も確認よろしくお願いします。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図